15.11.1 一般事項
この節は、こまい下地に、壁土で荒壁より中塗りまで施工し、色土・色砂又は消石灰入り壁土で、上塗りする土物壁、砂壁及び大津壁に適用する。
15.11.2 材料
(1) 荒壁土及び中塗り土
(ア) 荒壁土は、粘性のある砂質粘土 (荒木田土・荒土の類) で、15mm ふるいを通過する程度のものとする。
(イ) 中塗り土は、荒壁土で10mmふるいを通過する程度のものとする。
(2) わらすさ及び紙すさ
(ア) 荒壁用わらすさ (きりわら) は、わらを 30~90mmに切ったものとする。
中塗り用わらすさ(もみすさ)は、わらを切ったもの又はわら縄を20mm 程度に切ってもみほぐしたものとし、もみすさ切返しは、もみすさを更に長さ 10mm 以下に切ったものとする。
上塗り用わらすさ(みじんすさ)は、わらをよく打ち3mm程度に切り、節のあるものを取り除き、水にさらしてあく抜きしたものとする。
(イ) 紙すさは、日本紙、みつまた、こうぞの繊維等とする。
(3) さらしすさ及び白毛すさは、15.9.2(2)による。
(4) しゅろ毛及びパームは、15.9.2(4)による。
(5) のり
(ア) 土壁用ののりは、ふのり、つのまた、ぎんなんそう、粉末海藻等とし、種類は特記による。
特記がなければ、つのまたとする。
(イ) 砂壁用ののりは、ふのり、つのまた、こんにゃくのり、にかわ、合成高分子系混和剤等とし、種類は特記による。
特記がなければ、ふのりとする。
(6) 色土
(ア) 土物仕上げに用いる色土は、0.9~1.5mmふるいを通過したもので、色調一定で変色のおそれのないものとし、種類は特記による。
(イ) 大津仕上げに用いる色土は、1.5mm ふるいを通過したもので、色調一定で変色のおそれのないものとし、種類は特記による。
(7) 消石灰は、JIS A 6902 (左官用消石灰) に基づく上塗り用とする。
(8) 色砂は、天然砂と岩石の砕砂又は人工的に着色・製造したもとし、種類は特記による。
(9) 砂は、有害量のごみ、土、有機不純物、塩化物等を含まず耐火性及び耐久性に悪影響を及ぼさないものとし、粒度は、表15.11.1による。
15.11.3 調合
(1) 下塗りの調合は、特記による。
特記がなければ、表15.11.2を標準とする。
(2) むら直し及び中塗りの調合の標準は、表15.11.3 による。
(3) 上塗り
(ア) 土物仕上げの調合及び塗厚の標準は、表15.11.4による。
(イ) 砂壁仕上げの調合及び塗厚の標準は、表15.11.5 による。
(ウ) 切返し仕上げの調合及び塗厚の標準は、表15.11.6による。
(4) 大津仕上げの調合及び塗厚の標準は、表15.11.7 による。
(5) 材料の性質により(1)から(4)までにより難い場合は、監督職員と協議する。
15.11.4 塗厚
塗厚は、特記による。
特記がなければ、表15.11.8 による。塗厚は、柱ちりを残して上塗り面を標準とする。
柱の太さに応じて塗厚が変わる場合は、むら直し及び中塗りにより仕上げ厚を調整する。
また、建築基準法に基づく耐力壁の指定がある場合は、特記による。
15.11.5 工程
(1) こまい壁の工程は表15.11.9 により、○印の工程を行い、種別は特記による。
特記がなければ、種別はA種とする。
(2) 土物仕上げの工程
(ア) 水ごね土物1工法の工程は、表 15.11.10 を標準とする。
(イ) 水ごね土物2工法の工程は、表 15.11.11 を標準とする。
(ウ) のりさし土物工法の工程は、表 15.11.12 を標準とする。
(エ) のりごね土物工法の工程は、表 15.11.13 を標準とする。
(オ) 砂壁仕上げ工法の工程は、表 15.11.14を標準とする。
(カ) 切返し仕上げ工法の工程は、表 15.11.15 を標準とする。
15.11.6 工法
(1) 下塗りは、次による。
(ア) 荒壁土は、水とよく混練りした後、わらすさを混ぜ、粘土が多くて粘性の著しいときは砂を適量補い、よく切り返しながら粘土の小塊を砕きつつよく混ぜる。
(イ) 荒壁は、こまいに十分すり込んだ後、こまい表面より厚さ 12mm程度、貫材と同一面に塗り付ける。
(ウ) 裏なでは、次による。
荒壁土は、こまい裏に十分突き出させ、同日中にこてでなで返し、こまいになじませ、余り土はかき落とす。
(エ) 裏返し (裏壁塗り) は、次による。
壁裏は、荒壁土でやや厚めに塗ってなであげる。
貫の下に隙間ができないように確実に充填する。
(2) むら直しは、次による。
(ア) 墨打ちは、荒壁塗り後、壁の塗厚を決めて、壁周囲の柱等に朱墨を打つ。
(イ) 貫伏せは荒壁乾燥後、貫材の上に貫伏せ土を薄く塗り、両側の荒壁に60mm 程度かかるように麻布、しゅろ毛、パーム等の貫伏せ土を用いて伏せ込み、貫材と荒壁土とを連結させる。
麻布を用いる場合は、縦230mm、横180mm程度のものを20mm前後の隙間をあけて伏せ込む。
(ウ) ちり回りは、のれんを打つか、又は、ちり回り用下げお (短ひげこ) を間隔60mm程度に打って、ちり回り土又はちりしっくいを塗り付ける。
(エ) むら直し塗りは、貫伏せ及びちり回りが十分乾燥した後、むら直し土を付け送って十分むらをとる。
(3) 中塗りは、むら直しが十分乾燥した後、ちり回りは、正しく、むらなく塗り付け、平滑にこて押えする。
(4) 養生は、次による。
(ア) 荒壁塗付け後は、通風を十分与え、塗り面の乾燥を図る。
(イ) 凍害を受けないよう注意し、凍害を受けた場合は、落として塗り直す。
15.11.7 土物仕上げ
(1) 色土、色砂及び中塗り土の壁土で、こまい壁塗りに上塗りする土物仕上げは、次により、工法の種類は特記による。
(ア) 土物仕上げ工法
(a) 水ごね土物1工法
(b) 水ごね土物2工法
(c) のりさし土物工法
(d) のりごね土物工法
(イ) 砂壁仕上げ工法
(ウ) 切返し仕上げ工法
(2) 工法は、次による。
(ア) 水ごね土物1工法は、表15.11.10により、色土を1日水につけておいた後、1.0mm ふるいで水こしし、みじんすさと砂をよく混和し、塗り付けて十分むらを取り、厚手のこてで仕上げる。
(イ) 水ごね土物2工法は、中塗り土で下付けし、表15.11.11により、塗り仕上げる。
(ウ) のりさし土物工法は、表15.11.12により、水ごね材料に適量ののりを混合したもので塗り仕上げる。
(エ) のりごね土物工法は、表15.11.13により、色土に砂及びのり液を混合したものを塗り仕上げる。
(オ) 砂壁仕上げ工法は、表15.11.14により、特に中塗りをよく乾燥させてから塗り込み、地むら、こてむら、ちりぎれ等がないようこて押えを十分に行い、入念に塗り仕上げる。
(カ) 切返し仕上げ工法は、表15.11.15により、中塗り土、色土とも、地むら、こてむら、ちりぎれ等がないよう入念に塗り仕上げる。
(3) ちりじゃくりは、特記による。柱のちりじゃくりは、上塗り面を仕上げこての刃先の厚さ (1mm程度) だけ透かせて納める。
(4) 養生は、次による。
(ア) 梅雨時期の上塗り施工は、可能な限り避ける。
(イ) (ア)以外は、15.11.6(4)による。
15.11.8 大津仕上げ
(1) 色土と消石灰入り壁土で、こまい壁塗りに上塗りする大津仕上げは、次により、工法の種類は特記による。
(ア) 普通大津仕上げ工法
(イ) 大津みがき仕上げ工法
(2) 工法は、次による。
(ア) 普通大津仕上げ工法は、中塗りの未乾燥状態のときに下付け及び上付けの2層塗り1回で仕上げる。
(イ) 大津みがき仕上げ工法は、下付け及び上付けの2工程を同日中に仕上げる。
上付けは下付けの水引き具合を見て塗り付け、こてでよく磨き、つやが出始めた時期に少量の水を含ませた布で塗り面をふき、表面をもどし、磨きをかける。
この工程を数回繰り返し、最後にビロードやフランネル等で壁面を横一方向にふいて、もやを取り仕上げる。
(3) ちりじゃくりは、15.11.7(3)による。
(4) 養生は、15.11.7(4)による。
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